アプリ「潮騒の街」感想

自己啓発本に疲弊した男が海辺の田舎で愛(?)を取り戻す話。

ネタバレあり。

 

「償いの時計」「しあわせのあおいとり」と同じところが配信しているゲームアプリということで、今度はどんなパンチの効いたストーリーなんだろうとワクワクしながらプレイ開始。

 

主人公が幽霊と話せることとか、かたくなに他人を拒むところとか、浜辺にいた女の生霊とか、心の木ってなんやねんとか、そういうツッコミどころはさておき、

二年前から住み始めた田舎でたまたま隣家になった家庭の女の子の幽霊に対して「(女の子の)両親と同じように愛していた」と思う成人男性って……と、すみませんがちょっと悪い方向に痛烈なパンチを喰らいました。

念のため言うと、そういう話ではない。

このゲームはそういう話ではないので大丈夫です。

 

ストーリーはというと、都会での人間社会の荒波に揉まれまくった主人公が現実に疲弊しまくり、そんなときにふと目にした「潮騒の街」という本がきっかけになり田舎への移住を決めた……というのが前提。

納屋にはかつて一心不乱に読んでいた自己啓発本が押し込まれており、現在の主人公はというと、(おそらく)腐った人間関係に嫌気がさして他人との交流を拒んでいる。しかし二年前、隣家に住んでいた女の子(さっき登場した女の子ですね)が病死し、その最期に立ち会わなかったことをずっと悔いていた。

そしてある日、浜辺で投身自殺したらしき女の幽霊と出会い、彼女がじつは死んでおらずただ生霊を発生させていただけだったことや、近所の住人との交流を経て徐々に他人に心を開いていく……というのが大まかなストーリーです。

 

いい話でした。全体を通して。

最初は素っ気なかった相手と少しずつ育んでいく絆、いいじゃないですか。

舞台が浜辺の町(あえて町と呼ぶ)なのもポイント。

じっさいに主人公を操作して歩ける範囲は広くないものの、雰囲気がいい。

キーアイテムとなっている本を閉じる音なんかも製作者のこだわりが感じられていて素敵です。ラストの本の演出、好きです。

 

だけどなんというか大筋がはしょられすぎなのか、ストーリーに関しては、プレイヤーがやや置いてきぼり感を抱くかな、というのが率直な感想です。

 

もしかしたら私は冷酷な人間かもしれません。

主人公に感情移入という感情移入があんまりできませんでした。

 

というのも、自己啓発本に振り回される人間というのを(ネット上ではなくプライベートで)見たことがなく、私自身読んだことがある自己啓発本(?)はホリエモンさんと厚切りジェイソンさんの2冊だけだし、田舎特有の人間関係のめんどくささなんかも多少知っているせいか、主人公と病死した女の子家族のような綺麗な人間関係なんか幻想だろ! と思ってしまうのです。ごめんなさい。

 

でもお墓が建ったときは感動しました。

 

救急車を呼ぶのにもたつく女に苛立つ主人公の場面は、なんだか人間味が感じられて好きなシーンです。あとベッドの下にいた猫。猫ってそんなもんだよね。

それから音楽も作品の雰囲気にマッチしていて素晴らしいと思いました。次回作のエンジェルロードもプレイしてみたくなります。

 

 

前2作と比較すると衝撃的な要素には欠けるイメージ。こっちは、綾野剛さん主演で連ドラやってそうなヒューマンドラマ的な感じです(あくまでも個人の感想です)。

 

おそらくプレイした人によって感想は左右される、それが顕著にあらわれるゲームだと思います。