ヴァン・ヘルシング-Darkness Blood-の話
好きな言葉は「女子」で嫌いな言葉は「男子」。そんな吸血鬼ハンターの一生(?)を綴った漫画、ヴァン・ヘルシング‐Darkness Blood-の話。
前にも一度書いたことがあるんですが、いろいろあって記事を消したので再度ここに書きます。
主人公は名のある吸血鬼ハンター、ヴァン・ヘルシング。
夜な夜な吸血鬼を退治していく彼はクズオブクズでした。
そのあまりにもモテない不遇な過去のせいでひねくれた性格の中年に育ったヘルシングは、「男子を思わせぶりな態度でヤキモキさせる女子大生になりたい」だとか「私はブスとすれ違う時に息を止めるクセがあるのだ」だとか耳をうたがうようなセリフを平気で言いながら吸血鬼ハンターとしての仕事をこなしていきます。
そういう漫画です。
ほかにも、
やむなく血を吸われたせいで吸血鬼になってしまった善良な男性医師を「イケメンだから(気に食わない)」という理由で退治しようとして多くの女性の反感を買ったり、
教会に住むシスターたちの中にまぎれこんだ吸血鬼を探すというミッションで「ブスのあいつが吸血鬼だ」とか言い出して仕事仲間のヴォルフに叱られたり、
この漫画に登場するヘルシングはとにかく女性コンプレックスをさらにねじ曲がったほうに歪ませています。
ちなみに言いますが(お気付きでしょうが)本作はシリアスな皮をかぶったギャグ漫画です。
でもそのクズ&ゲスっぷりが大変おもしろいのですよ!!!
なんでおもしろいかっていうと、
私たち人間は日常生活でクズさ・ゲスさを抑圧しながら生きていると思うのですが(多少漏れだす場合はあれど)、この漫画の中ではそんなクズさ・ゲスさを主人公が読者のかわりに存分に発揮しているんですよね。
主人公が。
一番やっちゃいけない人が。
もちろんストッパーとしてヴォルフやテンプル騎士団、その他大勢の吸血鬼がツッコミ役として存在しているんですが、……そうなんです、敵である吸血鬼でさえもヘルシングの前では良識人になっているのですが、それでもヘルシングの基本的な性格・スタンスは最終巻である3巻のラストまで一貫しています。
ここが本当すごいと思うんですよね。
ふつう漫画の主人公はなにかしら成長を見せると思うんですが、この漫画の主人公ヘルシングにはそれがない。
ゆるぎない下劣さを崩さないまま物語を終わらせている姿が、私のような読者にはすばらしく清々しく見え、そして読み終えたときにはスカッとするんです。一種のストレス発散法なんじゃないかなコレっていうくらい。
個人的にお気に入りなのが先ほども書いたイケメン医師吸血鬼のエピソードで、
そのイケメンの診療所が村で大人気になっているところへ訪れたヘルシングが「イケメンで頭脳明晰で村で大フィーバー、(これだけでもうじゅうぶんハイスペックすぎるのに)おまけに性格もいいのは絶対におかしい」などといったことを仲間のヴォルフに力説しているシーン。
ゲスいけどそう思う気持ちはちょっとわかる。
ついでにブ男のファットマンを自分の味方につけ、イケメン医師吸血鬼を支持する村の女性全員を敵に回すという主人公らしからぬ暴挙にも度肝をぬかされました。
なのでこのエピソードが収録されている2巻が超オススメ。
ふだん自分が抑制しているクズさを主人公が代わりに振りまいてくれているので、逆に「こんな主人公みたいになるのはダメだな」って気付かせてくれる漫画です。
好きなセリフは「もし私が死んだらどこに行くだろうか? 地獄とかナシでの話!」です。