映画「最高の人生の見つけ方」感想(ネタバレ注意)

映画「最高の人生の見つけ方」視聴しました。

 

 

ガンを告知された自動車修理工カーターと、同じくガン患者であり病院経営者エドワードの二人は、エドワードが経営する病院の病室で出会います。

二人とも短い余命が告知され、ある日カーターが「棺おけリスト」という、死ぬまでにやりたいことリストを書いたことをキッカケに二人は病院を抜け出し、エドワードのありあまる資産と秘書のトーマスを連れて世界中を旅して回ることに。

 

大まかなあらすじはこんな感じ。

 

歴史の教員を目指していた過去があり、やたら歴史に詳しいカーターと、ぶっきらぼうで嫌味たっぷりのエドワード、それからエドワードに容赦なく皮肉を言う忠実な秘書トーマス三人のキャラが好ましかったです。

 

そして何より「棺おけリスト」を軸にしていろんな行動を起こす老人二人という画が良かった。スカイダイビングや、レースサーキットではしゃぐカーターとエドワードはまるで子どもの頃に戻ったようでした。

そう、「戻る」んです。

妻と長年連れ添っており、孫もいるカーターは、妻に対して女性への気持ち、平たく言えば性欲に値する感情を抱くことができずにいましたが、カーター最期の夜、彼は妻をベッドに誘いました。

一方エドワードは、喧嘩別れして縁を切られた娘との再会を、カーターの手紙に導かれて果たします。

過去の自分に戻りつつも、これって進歩だったんじゃないかなあ、と思いました。

 

そんな二人を見ていたトーマスは、二人が亡き後、カーターが憧れていたエベレスト山頂に二人の遺灰を安置。

この映画は一見カーターとエドワードの友情話に見えますが、そうではなくて、カーターとエドワード、そしてトーマス三人の友情を描いた作品なのではないかと感じました。

バーにてエドワードに仕向けられた女性の誘いをカーターが断ったと知ったとき、ほほ笑んでいたトーマスが印象的です。

 

にしても映画を見るたびに思うんですが、ある事柄について、その事柄の詳細を言わずに事柄について語る、視聴者に理解させる、というテクニックにひたすら感服させられます。

たとえばカーターが倒れるとき。

ベッドの陰で床に倒れているらしいカーターの痙攣している両足を映し、うろたえる妻の顔を映し、そして資産運用の会議中にいるエドワードを映します。そこでトーマスが電話が入っているという報せを持ってくるのですが、誰からの電話だか知らないけれど今は出ない、というエドワードに、トーマスは電話の内容は言わず、ただ一言「出るべきです」と言うんです。そして表情が強張るエドワード……という構図に、は~すごいな、と思いました。

これだけで「カーターが危篤状態」であることが視聴者にもわかるし、緊迫感を伝えています。それから物語もいよいよ終盤に差し掛かったんだな、ということも理解できます。

なんていうんだろう。表面の言葉や表情だけで、深層にある事実を外界にも知らせる、みたいな、うまい喩えが出てこなくて悔しいんですが、そんな感じ。

 

そして最大のミスリード、「カーターよりもエドワードが先に死ぬんだな」のフェイク。これですね、この作品一番「してやられた!」と思ったのは。

 

笑ったり泣いたり、勉強させてもらえたりした映画でした。

棺おけリストのひとつ、「世界一の美女にキスをする」シーンがお気に入りです。