映画「英国王のスピーチ」感想
吃音に悩むイギリス王ジョージ6世とその妃エリザベス、そして言語障害専門のライオネルが中心となって物語を展開する映画。
恥ずかしながらこの作品がアカデミー賞作品賞を受賞した偉大な映画であることは、観賞し終えたあとに知りました。
以下あらすじを含めた感想です。
まずジョージは物語序盤では王位継承権第2位の王子であり、王位に即位するのは物語後半でした。
ジョージは非常に「どもり」がヒドい。
なので夫を思う妻エリザベスが〝言語障害専門〟のライオネルとジョージを引き合わせたのですが、まあライオネルが曲者曲者。
相手が王族だろうがライオネル自身からは屋敷に出向かない。
言語障害を克服するための訓練はライオネルの自宅兼仕事場で。
訓練部屋に入ったなら王族も平民も関係なしに対等な立場で。
ジョージのことは遠慮なく「バーディ」と呼ぶよ!(バーディと呼んでよいのは本来王族の家族だけ)
という、変人中の変人でした、このライオネルという御仁。
変人というか遠慮がない。
舞台がイギリスで、主人公の言語に難があり、それを正していくパートナー……というところでピグマリオンを思い浮かべました。
そう、この主人公ジョージもピグマリオンの主人公イライザと同じく、そしてライオネルと比肩するほどの曲者なのでした。
自分は吃音がヒドいから王になんてなりたくない!
と主張するのです。
しかし物語は面白おかしいほどにジョージに無情で、周囲の環境はジョージをイギリス王にしてしまいます。
なんだかもう本当に笑っちゃうくらい、見事に王位に就くのです。
そこでジョージはなんとか〝どもらず〟スピーチしようとするのですが……
やっぱり無理ー!
なので、ライオネルと二人三脚で吃音を克服していきます。
ライオネルはジョージと触れ合うことで、ジョージの吃音の原因が幼い頃からの周囲による教育だと見抜きます。
左利きを矯正されたり、乳母から虐待まがいのことを受けていたり、父からのプレッシャーだったり……なにもただの性格ではなく、心の負担が吃音となってジョージの表面に現れていたのです。
ライオネルは(やり方は粗っぽいですが)ジョージのメンタルケアをしていきます。
粗っぽいですが。
しかしその吃音の原因を聞くと、私、ジョージへの愛着というか、愛情というか、同情というか……そういった親愛的な感情が生まれてきてしまいました。
ジョージはすごく頑張ってる。めちゃくちゃ頑張ってる。
だから、ライオネルになんとかしてほしい!物語が進むにつれ、そう思うようになっていました。
ジョージがマイクの前に立つたびに、何度「頑張れ!」と言ったことか。
そして物語ラスト、ジョージは約9分ものスピーチを見事成功させました。
そうなるともう、おめでとう、しか言いようがない。
状況は状況だが(第二次世界大戦が始まる最中でした)祝福せずにはいられなかったです。
よかったー!
あと、この映画で素晴らしいのが、ジョージの妻エリザベスの夫へのサポートです。
エリザベスは夫の吃音を「なんて素敵」と言い、吃音に悩む夫のためにライオネルを捜し出し、訓練中も献身的に支えてました。
なんか、すごい夫婦愛だなあと思いました。
夫婦愛……家族愛、ですかね。素敵だなあ。
戦争になってしまうラストだけど、それでも幸せを感じずにはいられないのは、エリザベスの存在があったからだと考えます。
にしてもライオネル、こういう変な人、好きだなあ〜。
そう思いました。